履歴書は、採用を考える際の重要な判断材料として利用されるだけでなく、それに記載されている個人情報は、応募者のキャリアや人生の一部を示すものとしても非常に価値があります。このような重要な情報をどれだけの期間、どのような方法で保管すべきか、そしてその情報が不要になった時にはどのように廃棄すべきかは、企業や組織の社会的責任や法的義務として考えられる問題です。近年、デジタル技術の発展とともに、履歴書の取り扱い方法や保管の慣行にも大きな変化が見られるようになりました。この記事では、履歴書の保管期間やその重要性、法的背景、そして保管や廃棄時の手順と注意点について詳しく解説します。
目次
1. はじめに
履歴書は、求人への応募時に提出される重要な文書の一つです。それぞれの履歴書には、応募者の学歴、職歴、資格、特技などの詳細な情報が記載されており、企業や組織が新しい人材を採用する際の基本的な参考資料として利用されます。
履歴書の重要性とその役割
履歴書は、採用者と応募者の間の初めてのコンタクトポイントとも言える文書です。これにより、採用担当者は応募者の背景や経験、スキルを理解し、彼らの適性や企業との適合性を判断します。したがって、履歴書は求職者のプロフェッショナルなアイデンティティを表現する手段として、非常に重要な役割を果たします。
- 適切な職種やポジションへのマッチング
- 個人の経歴や経験を明確に伝える手段
- 企業の人材ニーズに応じた選考の基準としての活用
保管期間とは何か、なぜ重要か
履歴書には応募者の個人情報が詳細に記載されているため、適切な保管と管理が必要です。保管期間とは、企業が履歴書を保持する期間を指します。この期間は、法的な観点や組織の方針、また採用のニーズに応じて異なる場合があります。
- 個人情報の適切な管理とプライバシーの保護
- 将来的な採用のニーズや再評価のための資料としての保存
- 法的な問題やトラブル回避のための参照資料としての活用
2. 法的背景
履歴書の取り扱いに関しては、採用活動や人事業務における法的背景が存在し、それに基づき適切な管理が求められます。特に、個人情報の取り扱いという観点から、法令順守は非常に重要です。
人事や採用に関する法律やガイドライン
人事や採用活動は、労働基準法や雇用均等法、障害者雇用促進法などの法律に基づき行われるものです。これらの法律は、労働者の権利を保護するためのものであり、採用に関する取り決めや手続きも含まれています。
- 労働基準法: 労働時間、休日、賃金などの労働条件に関する基準を定めています。
- 雇用均等法: 性別や年齢による差別を禁じ、公正な採用を促進します。
- 障害者雇用促進法: 障害者の雇用を促進するための取り組みや制度を提供します。
個人情報保護法と履歴書の関係
履歴書には、名前、住所、学歴、職歴などの個人情報が記載されています。このような情報は、個人情報保護法の規定に基づき、適切に管理される必要があります。企業や組織は、個人情報を取得する際に、その目的を明確にし、利用範囲内でのみ使用し、第三者への提供は原則禁止されています。
- 利用目的の通知: 企業は、履歴書を収集する際の利用目的を明確に告知する必要があります。
- 安全管理措置: 収集した情報の適切な管理や、不正アクセス・漏洩の防止策を講じる義務があります。
- 第三者提供の制限: 原則として、個人の同意なく第三者への提供は禁止されています。
3. 履歴書の保管期間の一般的な基準
履歴書に記載された個人情報は非常に重要です。そのため、適切な期間、方法で保管することが求められます。保管期間は採用の状況や企業のポリシー、法的な背景に基づいて設定されます。
採用時の保管期間
採用が決定した場合、履歴書や職務経歴書は新たな従業員の人事ファイルとしてアーカイブされることが多いです。この際の保管期間は以下のようになります。
- 従業員が退職後、5年以上の保存が必要です。
- この5年の保存期間は労働基準法第109条で規定され、企業の内部ポリシーや業界の慣習、法的に必要な期間(例: 労働紛争や訴訟のリスクを踏まえた期間)を考慮し、延長される場合がある。
採用後の利用方法
採用が完了した後も、履歴書の情報は重要な参考資料として扱われます。
- 評価や昇進、異動の際の参考として、また従業員のキャリアパスの検討や研修の計画立案時に利用される。
- 再雇用や内部の異動時に再確認するためにも利用される場合がある。
不採用時の履歴書の取り扱い
不採用となった場合の履歴書の取り扱いには特に注意が必要です。
- 一般的には、不採用通知後、一定期間(数ヶ月から1年程度)の保管が一般的。
- 再応募の際の参考資料や、将来的な採用の可能性を考慮して保管することも。
- 法的なトラブルを避けるため、適切な期間を過ぎたら速やかに廃棄することが推奨される。
4. 保管の方法と注意点
履歴書の適切な保管は、情報の正確性と個人情報の安全性を確保するために不可欠です。現代の企業は、デジタル化が進む中で多様な方法で履歴書を保管していますが、それぞれの方法には特有の注意点が存在します。
デジタルデータとしての保管
多くの企業がデジタルデータとして履歴書や職務経歴書を保存する動きを強めています。電子ファイルとしてのアーカイブは、保存スペースの節約や検索・整理の容易さが魅力とされます。また、クラウドサービスを利用することで、アクセス性が向上し、災害時にもデータが保護される利点があります。しかし、デジタルデータの保存には、データのバックアップや暗号化、アクセス権の設定といったセキュリティ対策が不可欠です。
紙ベースでの保管
紙ベースでの履歴書の保管は伝統的な方法ですが、今も多くの企業で行われています。専用のファイリングキャビネットや封筒での保管は一般的で、場所の確保や整理・検索に手間がかかることもある反面、デジタルデータのような技術的なトラブルのリスクは低いです。しかし、湿度や直射日光からの保護、物理的な消失や紛失のリスクを考慮し、適切な環境での保存が求められます。
漏洩や不正アクセスからの保護
保管方法に関わらず、履歴書の情報の漏洩や不正アクセスは絶対に避ける必要があります。アクセス権限を制限し、必要な人のみが情報にアクセスできるように設定すること、セキュリティソフトのアップデートや定期的なセキュリティ監査を行うこと、そして従業員や関係者への情報保護に関する教育や研修を実施することが重要です。
5. 廃棄時の手順と注意点
履歴書や職務経歴書の保管期間が終了した際、または保管の必要がなくなった際には、適切に廃棄することが求められます。これは、個人情報の漏洩や不正使用を防ぐための重要なステップです。
個人情報の適切な廃棄方法
個人情報の適切な廃棄は、法的観点だけでなく、企業の信頼性やブランドイメージを守るためにも不可欠です。データの消去や物理的な破棄は、情報が第三者の手に渡らないよう確実に行われるべきです。特に、顧客情報や従業員情報などの機密情報を含む文書には、十分な注意が必要です。
デジタルデータの完全消去
デジタルデータの場合、単にファイルを削除するだけでは情報が完全に消去されるわけではありません。復元可能な状態で残っている場合が多いため、専用のソフトウェアを使用してデータを上書きしたり、物理的にディスクを破壊するなどの措置が必要です。
紙ベースの確実な破棄
紙ベースの文書に関しては、シュレッダーでの細断や焼却など、情報が第三者に読み取られないような状態での廃棄が推奨されます。特に、細かい情報が詰まった履歴書のような文書は、適切な方法で確実に破壊することが重要です。
6. まとめ
本記事を通じて、履歴書の保管や廃棄に関わる様々な側面を検討しました。履歴書には、個人のキャリアや経歴、そして様々な個人情報が詰まっています。このような価値ある情報を適切に取り扱うことは、企業の社会的責任であり、法的な義務でもあります。
保管期間を守ることの重要性
適切な期間での保管は、情報の正確性や信頼性を確保するために不可欠です。過度に長く、または短く情報を保管することは、それぞれ異なるリスクを伴います。企業や組織は、法律やガイドラインを遵守するだけでなく、情報の価値やリスクをバランスよく考慮して、保管期間を設定する必要があります。
今後の動向や期待される変更点
デジタル化やクラウド技術の進化に伴い、履歴書の取り扱いに関する慣行や制度も変わりつつあります。特に、リモートワークの普及やオンライン採用活動の増加は、デジタルデータの保管や管理の重要性を一層高めています。今後は、更なる技術の進化に対応しつつ、個人情報の安全性を確保するための新たな取り組みや制度が求められることでしょう。
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