2021年12月3日の日経新聞で、愛知銀行と中京銀行の合併に関するニュースが報じられました。今後の経営基盤強化を狙いとして、2行は2024年を目標に早期の合併を目指していくといいます。
近年、銀行の合併事例が増えていますが、その際に多くのシステム統合トラブルも生じています。今回は、銀行同士のシステム統合のフローを概観した上で合併時のリスクを、主に文書管理の面から解説します。
銀行合併時のシステム統合のフローとは
銀行が2行以上合併する際、通常は以下のフローでシステム統合を行っていきます。
- 通帳・ATMカードの相互取扱いや銀行コードなどの変更に伴うシステム変更
- 商品・サービスの統一、店舗統合などを行うためのシステム統合の検討
1については、一般的にRC(リレーコンピュータ)と呼ばれる小型コンピュータに、コード変換やオンライン取引の仕訳機能を持たせて、各銀行のシステム同士を接続する手法が用いられます。いわゆるRC接続という手法ですが、この方法には元々の取引銀行でのATMや窓口でしか通帳や証書の取引ができないという欠点があります。どちらの銀行でも通帳や証書の取引を可能にするためには、ATMと窓口端末を相互に設置するクロス設置という方法をとります。
こういったシステム変更には多大なコストがかかります。大手銀行の事例だと、半年間に500人月程度の作業が必要といわれています。技術的には難易度は低いものの、顧客を含めた事前準備と移行作業に注意が必要です。当然、移行作業に伴い、顧客の個人情報を記入した書類も増えるため、適切な管理や処分が必要です。
2については、大きく分けて3つの方法があります。
- 片寄せ方式:一方のシステムを残して他方を廃棄する
- 最善機能選択方式:両行の機能の良い所取りを目指す方法
- 新システム開発方式:全く新しいシステムを開発して、両行ともに移行させる方式
1~3いずれにしても、長所と欠点がそれぞれあります。1でいえば、廃棄するシステム側にしかない機能や商品の取り扱いが問題です。あとから機能を追加するための開発を行うと、多くの場合トラブルの原因につながります。既存のシステムをなるべく変更しないことがシステム統合の成功ポイントです。
2は、時間や費用コストが最もかかる方法です。基本的には実務的・技術的には推奨できませんが、政治的判断によって採用されるケースもあります。
3を実現する場合も、時間と労力のコストが膨大です。パッケージ商品ではまず解決できないため、システムの新規開発に非常に苦労します。合併が前向きな目的で、かつ時間・予算に余裕がある場合を除いて、採用できる方式とはいえないでしょう。
上記をふまえると、二段階目のシステム統合は全面的な片寄せ方式が理想と考えられます。実際にメガバンクの合併事例を見ると、片寄方式を採用し大きなトラブルを防いだ三井住友銀行と、対等合併で2の手法を選びシステムトラブルが相次いでいるみずほ銀行を比べるとわかりやすいでしょう。
銀行合併で片寄せ方式を選択した際に想定される文書管理トラブルとは
銀行合併で最も現実的な手法である片寄せ方式ですが、一定のトラブルは必ず生じます。特に、廃棄するシステム側の銀行員は、新しいシステムに慣れるまでは一苦労です。
複数の銀行が合併すると、当然ながら管理すべき文書の量も2倍以上になります。合併時の混乱で、文書の紛失や流出トラブルが発生すると、後々の禍根になります。
企業合併後の文書管理の進め方は、両行の規程を見直し、これからの文書のファイリング方法、そして過去分の保存文書の管理方法を統一するのがベストでしょう。
しかし、残念ながら過去分の文書管理の手法統一は現実的に困難です。場合によっては支店ごとでも管理ルールが異なることがあり、過去文書を統一したデータベースにできないまま、合併後に管理がぐちゃぐちゃになることも珍しくありません。
文書管理は、なるべく早期に体制を整えないと、時間経過とともに書類量が増え、必要なコストが複利式で増えていきます。規定の見直しや管理台帳をいち早く統一をし、その情報をクラウド上の文書管理システムに取り込んでさえしまえば、あとの管理はぐっと楽になります。
銀行同士の合併はもちろんのこと、支店同士の統廃合の際にも文書管理トラブルは発生しがちです。ぜひ早めに現場の運用ルールも含めてサポートしてくれる文書管理のプロに相談をおすすめします。
弊社では、金融機関様も含めて数多くの企業・組織に文書管理のトータルサポートを提供して参りました。ホームページでは様々な企業様の導入実績をご紹介しておりますが、
「自行とSRIの文書管理が合うのかが分からない」
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- 今後の業務効率化やガバナンス強化のため、支店や倉庫含めた全体の契約書サイクルを見直したい
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