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Vol.89|ギグワーカーは労働者なのかについて解説!メリット・デメリットも紹介

Vol.89|ギグワーカーは労働者なのかについて解説!メリット・デメリットも紹介

2023年1月13日

東京都労働委員会は、飲食宅配代行サービスの「ウーバーイーツ」の配達員を労働組合上の労働者と認定しました。
その上で運営会社に対し、労働組合との団体交渉に入るように救済命令を出しました。

今回のこの決定は、「ギグワーカー」に対し労働環境や待遇が改善される可能性があります。
そこで、今回はギグワーカーは労働者なのかに関して解説します。

ギグワーカーとは?

「ギグワーカー」はインターネット上のアプリなどを用いて単発の仕事を請け負い収入を得ている人のことです。

ギグワーカーの「ギグ」はミュージシャンなどがライブハウスなどで行う短時間のセッションや、クラブで一度限りの演奏を指す英語のスラングです。

その流れで「一度限りの仕事を請け負う労働者」という意味合いで「ギグワーカー」という呼び名になったと言われています。

アルバイトとの違い

それではまず、アルバイトの働き方と何が違うのでしょう?
アルバイトとは、主に学業を本業とする学生および生活の目的を別の労働者がサポート的な役割で働く雇用形態です。

学生やフリーターを中心とする若年層に多く、基本的に継続的な雇用関係が成立しています。
そのため、「単発の仕事を請け負う」ギグワーカーとは雇用形態からして違うのは明確です。

日雇い労働者との違い

ギグワーカーと日雇い労働者との違いの一つめは「働く期間」です。
ギグワーカーは数分〜数時間の単発の仕事を請け負います。
一方、日雇い労働者は、一日単位の契約で雇われます。

二つめの違いは「雇用契約」です。
ギグワーカーが取り組む仕事のほとんどが業務委託です。
特定の企業に属していないので、個人事業主の扱いになります。

一方で日雇い労働者は、企業と直接雇用契約を結びます。
ギグワーカーと日雇い労働者は同じ仕事をこなしたとしても雇用契約が違うのです。

また、ギグワーカーと日雇い労働者では仕事の探し方も違います。
ギグワーカーは、プラットフォームと呼ばれる、求人サイトやアプリを用いて仕事を探します。
日雇い労働者は、公共職業安定所や求人情報誌、紹介などで仕事を探します。

フリーランスとの違い

最後にフリーランスとの違いを見てみましょう。
ギグワークとフリーランスは、双方ともに企業との雇用関係がありません。
しかし、「発注対象」が違うのです。

フリーランスは「案件単位」や「プロジェクト単位」で継続性のある仕事を依頼します。
そのために納品までの時間が長かろうが短がろうか報酬は変わりません。

対してギグワーカーでは、「時間単位」で単発の仕事を受注します。
そのため、ギグワーカーは単純な行動ノルマが与えられるのみで、企業はギグワーカーが作業を行った時間分の報酬を払うのです。

ギグワーカーで働くメリット

ギグワーカーは、「好きなときに好きなだけ働く」という自由度の高い働き方ができます。
ここではギグワーカーのメリットをみていきましょう。

自由に働ける

ギグワーカーは一般的な会社員と異なり、拘束時間などはなく、柔軟な働き方ができるのがギグワーカーの最大のメリットです。
「今週は1週間フルに働いて、来週の1週間は休む」「今週は平日は全休する」など会社員では難しい勤務スタイルも可能です。

自分が持っているスキルや都合に合わせて多種多様な仕事を自分で選べるのはギグワーカーの魅力です。

収入が増える

ギグワーカーは、本業を持っている方でも副業収入を期待できます。
短時間の空き時間などを利用して仕事ができるのもギグワーカーの魅力の一つです。
空いた時間を活用していろいろな仕事にチャレンジすれば副収入を得ることもできます。

ギグワーカーが生まれたアメリカでは、一千万を超える年収を稼ぐギグワーカーも存在します。

育児や介護と両立可能

ギグワーカーは、育児や介護をしなくてはならない方など、まとまった時間が取れずに正社員は難しいという方でも働くことができます。

定時に出社しなければならない訳ではありませんので、自分で働く時間を決められます。
そのために育児や介護と両立することが可能なのです。

ギグワーカーで働くデメリット

ここまでギグワーカーで働くメリットを見てきました。
一見すると、誰もが憧れてしまう働き方に見えますが、当然デメリットも存在します。
ここからはギグワーカーで働くデメリットについて解説します。

収入が不安定

好きなときに好きなだけ仕事ができるのが、大きなメリットなのですが、その好きなときに必ず仕事があるとは限りません。
ギグワーカーには、固定給もなく、仕事がなければ当然収入もありません。

また、病気や怪我のために働けなくなってしまった場合にも何の保証もありません。
収入を安定させるためには、一定件数の業務をこなす必要があります。
しかし、どの案件も長期的な受注が見込める訳ではなく、安定した収入を見込むのは難しいのが現状です。

すべてが自己責任

ギグワーカーは個人事業主ですから、通勤手当や有給休暇などの福利厚生はありません。
万一、病気や怪我で働けなくなったとしても、何の保証もありません。
もちろん、休業補償なども受けられません。

また、業務中に怪我をした場合であっても、治療費は自己負担です。
万一失業した場合でも失業保険は給付されません。
配達員の場合は交通事故に関するリスクを、IT関連であれば著作権やセキュリティ関係の事故対策を考えた上で働く必要があるでしょう。

ギグワーカーは労働者なのか?

ギグワーカーに従事している方の多くは、個人事業主の扱いとなっています。
要するに、働き方の自由度は高いものの、事故などがあった場合の責任は就業者が追わなければならないということです。

しかし、冒頭でお話しした通り、東京都労働委員会は、飲食宅配代行サービスの「ウーバーイーツ」の配達員を労働組合上の労働者と認定しました。
ここからは、この問題について見ていきましょう。

国内初の法的判断

今回東京都労働委員会がウーバーイーツの配達員を労働組合上の労働者としたことは国内で初となる法的判断です。

なお、ウーバーイーツ側はこれを不服として中央労働委員会に不服を申し立てました。
仮に裁判になった場合には、法的判断の確定までには数年かかる可能性があります。

この問題の背景について

世界的な規模で、フリーランスを始めとした「雇用関係によらない働き方が」増えています。
しかし、このような働き方をする方は、原則的にさまざまな労働法の保護を受けられません。

一方で労働法に保護されないフリーランスの増加は世界的に顕著であり、各国で雇用関係によらない働き方」をする人への法的保護が検討されているのです。

海外でギグワーカー保護のルール整備が進んでいる中、今回の判断を受けて日本でも議論が活発になりそうです。

今回の判断が企業に与える影響

近年、原則として労働法の保護を受けることができないギグワーカーを始めとするフリーランスに、団体交渉の枠組みを用いて、企業側と交渉したいというケースが増えてきました。

従来は企業が契約相手はギグワーカーで「自社の労働者ではない」という考えで団交を拒否してきました。
しかし、今回労働者として認められましたので、企業は労働組合が申し出た団体交渉を誠実に行わなければならなくなります。

ただし、今回企業側が不服申し立てをしましたので、結論が出るのは少し先になりますし、今回の判断は労働組合上の労働者ということであって「労働基準法」や「労働契約法上」の労働者とまでは判断されていません。
そのため、労働時間規制や割増賃金支払い義務、解雇制限、雇止め禁止などの義務まで負わされる訳ではありません。

まとめ

ギグワークは、単発・短時間で仕事を依頼できるので、余計なコストをかけず、必要なときに必要な分の労働力を確保できます。

そして、従来はギグワーカーが労働法の対象にならないことが問題視されていましたが、今回労働法の対象になるとの判断がされました。
今回不服申し立てを行ったことで、結論は少し先になりますが、どのような結果になるのか注視する必要があるでしょう。

現在は、ギグワーカーとは契約は結んでおりませんが、今回の判断が出たということで契約書が必要になる日が近いのかもしれません。

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